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うつをきっかけに似顔絵師になったバーバラのブログ

うつをきっかけに似顔絵師になった男の、みんなを幸せにするための冒険の日々をつづったブログ。 鬱病のことや、イラストのことなど、いろんなことを書くよ。

映画「書を捨てよ町へ出よう」レビュー



「俺の名前なんて誰も知らないし」という独白で始まる、寺山修二がメガホンを取ったATG(アート・シアター・ギルド)の作品。

ATGってのは、70年代とかに実験的な映画を数多くつくってきたところで、日本映画の歴史を紐解いていけば何度かその名前を見ることになる。

青森出身の主人公と、無職の父親、万引き癖のある祖母と、ウサギを偏愛する妹。
インテリな先輩にコンプレックスを抱きつつ、東京の街でやさぐれていく様子を、断片的なシーンと、歌や詩で紡いでいくんだけど、なにやら悪い夢でも見ているような映画。

「悪い夢」といったら、悪いイメージを与えるかもしれないけどもはや良いとか悪いとか、そういう概念の上に成り立つ映画ではなく、なにかセリフやシーンの端々や、歌の歌詞が、ぞくぞくと身体に絡みついていくような、麻薬のような魅力を持った作品。

世間的には「意味が分からない」って言うんだろうし、初めてゴダールの映画に触れたときのような感覚を覚える。

でも不快じゃないんだなあ。

もっと夢みたいな感じで、一種の素敵感。
決して健全ではないんだけど、むしろ健全な人は見ない方がいいんじゃないかってほどだけど、でもこの映画は社会をもっとも分かりやすく表現していると思うし、同時にもっと分かりにくくしてるし。

文学なんだなあ。

でも、そこで流れる歌が時々意味が分からなくて草生える。
「健さん会いしてる」とか前衛通り越して、もはやシュール。

寺山修二が寺山修二過ぎる作品。

実はバーバラは本作を見るのは二回目で、学生時代に一度専門学校の授業で観ていて、すごい衝撃を受けた。
レンタル店へ行けばどこでも置いてるし、観る機会はいくらでもあったんだけど、20年近くも時間が経ってしまった。

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